■次世代TVの最大の壁は、ハード/デザイン/UIではなく、業界との調整
▼AppleのiTV構想、テレビ業界との関係は前途多難(TechCrunch)
2012年1月の記事だが、ここに書いてあることは、本質的な話。AppleのiTVについて、ハードはどうなる?デザインは?革新的なUIで?みたいなことをよく記事で目にするが、それはそれなのだが、そもそも中身(コンテンツ)がなければ成立しないのがTVの難しいところ。そこの議論がまず大前提になるだろう。
▼Apple、「Apple TV」や「iTV」への映画配信に向けEPIXと交渉中か?! - 気になる、記になる…
そしてこれは2012年4月末の記事。Appleが映画スタジオとの交渉を開始した、との噂。コンテンツをどうそろえるか、映画、テレビ業界との調整中であることを伺わせるニュース。
そして、このあたりのニュースを見ながら、我々はそろそろ気づいたほうが良いことがある。それは「Appleって、日本市場で使うTVとして使い物になるの?」ってこと。今のところ、私は「デラックスなApple TVになる」くらいの想像しかできない。それはなぜか、以下で説明する。
■革新的なTVにするためには地上波/BS/CSの視聴体験を変える必要がある
iTVで、地上波/BS/CSという、既存コンテンツの視聴体験をどう変えるか、っていう噂話がぜんぜん出てこないよね。日本固有だから、置き去りってこかな?でも、そこを無視して、日本で使う革新的なTVになり得るのかな?たぶん、AppleTV以上のものにならないんじゃ?
■日本人が、日本国内で革新的な視聴体験を得るために必要なことは?
何が必要か?この3つしかない気がする。
【1】既存の地上波/BS/CSコンテンツが放送直後からiTunesストアで(無料/有料)購入できる。
【2】個人が予約した番組データが自動的にクラウド上に保管され、マルチプラットフォーム(スマートフォン/タブレット/PC)で閲覧できる。iTunes Matchライクに。
【3】自宅で録画サーバがあり、そこで全てのチャンネルが録画されており、見たい時に見たい番組を、自由に閲覧できるハードウエアと構造化データベースと検索機能が実装されたTVソリューション。SPIDERが実現している。
2については、日本には「公衆送信権」という法律があり、今のところ実現できない。米国でリリースされているiTunes Matchも、この法律があることにより、日本ではリリースされていない。日本では、いくら個人が録画、所有しているデータであっても、著作物をクラウドにおいて、ネットワーク越しに閲覧することができない。よって、この2の実現は難しい。
3については現状の日本の法律に触れない方法で最善の視聴体験を考えた場合、唯一の解である気がしている。ただ、「全てのチャンネルを自宅のレコーダー録画する」「B-CASカードは8枚」とか、そういうソリューションをAppleが出してくるとは思いがたい。また、このSPIDERというTVの手法は、全てのチャンネルを録画するところではなく、TV番組をウェブ化、構造化したところだ。SPIDERを販売する会社が、自前でTV番組のデータベースを作成して配信しているというところがミソなのだ。そんな、日本でしか通用しないやり方をAppleが選ぶとは思えない。
そういうわけで、残るは1。既存のTV放送局に、VODを全面的に始めてもらうしかない。それが最終型である。そして、そのための壁は、TV放送局との調整が必要なんだよね。日本固有の問題だから。そのへんを、Appleがすでに進めているのか、日本は蚊帳の外なのか。
日本は後回しというのなら、AppleのiTVが日本未対応で出てくる可能性が高いと言わざるをえない。残念ながら。
iPhoneが日本で発売の時に、App Store(アプリ)やiTunes Store(音楽/動画/書籍等)が日本のコンテンツが全て非対応だったら、どうだっただろうか?そんなイメージになる気がする。あるいは、日本だけ、米国に対して1年以上、iTVの発売が遅れるかのどちらか。
以上。