■主役から引きずり下ろされたPC
秋に発売されるWindows8というOS自体には、もうワクワク感はあまりない。OSに何かをしてもらおうという気がWindows Vista以降なくなったことと、日常的にはタブレット(iPad)を使っている時間が長いため、昔のように「何が何でもPC」ということではなくなってきたから。
スマートフォンやタブレットの登場による最大のインパクトは、PCを主役から引きずり下ろしたことだ。「ネットにつなげるためにはPCいるよね」というセリフを過去のものにした。PCというカテゴリの製品がなくなることは当分ないし、なくす必要もないのだが、大事なことはPCが「選択肢の1つ」に成り下がったこと。そこを考えて、ビジネスをしないと必ずコケる。特に、ハードウエアベンダがね。
■WindowsのOSライセンスが大幅に下がるのは必然
スマートフォンの登場によるインパクトは他にもある。OSやソフトウエアに対する人々の価値観・価格感が激的に下がった。85円、100円という価格で優れたアプリを買えるという感覚になれてしまうと、2万、3万というOSライセンスやパッケージソフトの価格には(一般の人は)もう後戻りできないだろう。
つまり、もうそういうビジネスが成り立たなくなる。スマートフォン登場以前までは、PCの世界であたりまえのように行われてきたこと。
▼Windows 8のOEM価格明らかに RTは50~65ドル | ガジェット速報
Macはかなり前から3000円程度でOSライセンスをダウンロード販売しているが、Windowsもそれにならって今秋のWindows8のライセンスは相当下げてくると報じられている。当然だろう。Microsoftとしてはお金の取り方を変えればいいので、ライセンスから得られた収入は一時的には下がっても、最終的に損はしないようにできるだろう(恐らく)。(例えば、App Storeを収入源にすればいいんだし)
■ソフトはタダで、ハードウエアには金を払う、という感覚
クラウドだ、ソーシャル・ネットワークだ、と、形なきものへ実質の機能がシフトしていく時代だが、逆に、ハードウエアへの人々の興味が高まっているような気がしていて、興味深い。
実は私自身、Windows8というOS自体にはそれほど興味がなくなったのだが、同時にMicrosoftから発売されるSurfaceと呼ばれるハードウエアには興味があったりする。
例えば、iPhoneやiPadのバージョンアップの話題に、ハードウエアデザインが大きく取り上げられたりするよね。iOSの進化よりも、画面が何インチになるかばかりが話題の中心になるというのも、ハードウエアに人々の興味や、意識が集まっていることを象徴的に表している。
iPadやiPhoneの価格の中には、iOSのライセンス代も入っているだろうが、買う人の意識は、ハードウエア(プロダクト)に払っているという感覚しかないだろうね。ソフトはほぼタダで使い、ハードウエアにだけ金を払うよ、っていう無意識の感覚が広まっている気がする。
逆に考えると、そこにビジネスチャンスがあるのではないだろうか。ハードウエアデザインには、金も出すしコダワリを持っている人が多い。日本のメーカーが狙うのも、そこだろうと思う。
以上。