■勉強に「面白い」を持ち込む
▼[JMM]From 村上龍 ~編集長エッセイ~/No.567 配信日:2010-01-18
この村上龍氏の記事が良かった。以下、引用。
知り合いから聞いた話ですが、「TVゲームは面白いものがたくさんあるのに、どうして教科書はつまらないのだろう」と真剣にその理由を考えた中学生がいたそうです。たいていの大人は、教科書が面白くないのは当たり前だと、そもそも疑問を持つことがないかも知れません。ただ、その中学生は必死で考え、ついに自分なりの解答を得ました。「TVゲームを作っている人たちは何とか面白くしようと必死で考えているが、教科書を作っている人たちは面白くしようとまったく考えてない」というのが彼が得た解答で、「その証拠に、教科書検定で『面白さ』が問われることはないようだ」という補足説明もあったそうです。
こういう子供の着眼点って、バカになった大人の頭をパーンと撃ち抜きますよね。すごく良い刺激になります。そうです、なぜ教科書が面白くないのか、という視点はとても大切で、必要なんです。
もちろん、教科書が面白くできない理由はいくつかあります。教科書に盛り込まないといけない内容(学習指導要領)が多すぎて、どうしても表現が詰め込みになってしまうことや、教科書を利用するための大きな目的が「大学入試(ペーパーテスト)」になっていることもあるでしょう。
たしかに教科書の改良の余地は十分にあります。教科書が面白さを追求した作りになってくれたほうが良い。ただ、教科書の作りだけに頼るのは限界はありますよね。面白いかどうかは、教科書の提供側だけでなく、受け止める側の感覚にも依存しますからね。
つまり、目標は「教科書が面白くなる」ことではなく、「学校の授業で学生が面白いと感じられることを増やせる」かどうか。「面白い」と感じるところから、その学生のパフォーマンスは伸び始めると私は思うので。
学校の授業で「面白い」を増やすためには、パッと思いつくものでも以下が必要です。
・教科書を提供する側は面白さを追求する
・教師が面白さを追求した授業をする
・学生は面白いを感じやすくするため、感覚を日々磨いておく
(面白いと感じたものは、自分でより深く追求する)
そうなんです。みんなで「面白い」を追求することが大切なんですね。「誰かのせい」とか「どこかの組織のせい」にしてもダメなんです。
■仕事に「面白い」を持ち込む
この「面白い」という感覚が大切なことは、じつは仕事も同じです。私は社会に出て働き始めて20数年になりますが、今の私の会社人生を支えている一番大切なものは「お金」でもなく「役職」でもなく、仕事における「面白い」です。これは間違いなく、そう。
「会社が好きかどうか」「自分のやっている仕事全般が好きかどうか」というのは、正直、どうでもいいと思っています。やっている仕事だって、いくつもの仕事を抱えているわけで、すべてを好きとはとても言えない。そういう人は多いと思います。私もです。
でも、大切なのは、そこではない。自分のやっている仕事の中で「面白い」と感じる仕事があるかどうか。これがあるかどうかが大きな分かれ道になると思っています。
仕事にも面白さを追求したい。「面白い」を増やしたいんですよ。それにはもちろん、影の努力や経験や誰かの助けや、そういういろんなものが必要なんだけど、目的が面白いを増やすということだったら、やれる。喜んで頑張れる。そうやって「面白い」が増えていくことで自信がつくし、いつか自分が折れそうになった時に自分を守ってくれる。そういう経験が何度もあります。
■「面白い」を手に入れるために
誤解されそうなので、最後に補足を一つだけ。
「面白いを増やすこと」と、「好きなことを仕事にする/楽しく仕事をする」とは、表現は似ているけれども違います。(最初から)好きなことだけを仕事にしようとしていたら、おそらく「面白い」を増やせない。「面白い」ってそんなに簡単に手に入らないんですよ。特に仕事においては。
まだ社会に出て働いたこともない人が、最初から自分にとっての「面白い」が何なのかなんてわかるはずない。どんな仕事でもいいから、とにかく「求められたらどんな仕事でも引き受ける」くらいのがむしゃら感がほしいです。そうするべき、とは言いませんが、そうしたほうがきっといい。仕事をしながら、お金をもらいながら学ぶことは非常に多いです。そうやって、お金をもらいながら学び、いくつもの壁を乗り越えながら、その先に「面白い」が存在していると私は思うから。
これから社会に出る方には、ぜひ、1つでも多くの「面白い」を手に入れてほしい。会社の中にいるお年寄りたちは「面白い」を持っていない人が大勢います。そんな人たちを「面白い」エネルギーで吹き飛ばしてほしいと思います。そうすれば、会社が変わる、社会が変わる、その先に日本が変わっていくのかな、と期待したいです。
以上。