名古屋にコストコがオープンしたのは、昨年(2013年8月)だった。すでに北海道から九州まで、コストコは展開しているので、名古屋は他県に比べて後発でしたね。
そんなわけで、つい先日、初めて行ってみました。「食料品中心/安いがボリュームが大きい」くらいの予備知識だったのだけど、商売のやり方が意外と面白かったのでそのことを書こうと思う。
「(これが欲しかったんだと)気づかせる」「(どこよりも安いという) 価格競争力」の2点が、他の同業者とくらべて頭ひとつ出ていると思った。
気づかせる
店に入って私の目に飛び込んできたのは、食料品ではなく、家電だった。テレビの他、どちらかというとPC周りの小物が面白かった。
例えば、このJabraというデンマークの会社のスピーカー。ネットの最安値でおおよそ1万円程度のものが、5000円前後。昨年発売された、JABRA SOLEMATE MINIも、ほぼ同じ値段。店頭で音を鳴らして、音質も確認できた。値段のわりにはよく鳴っていたし、心動くものだった。このスピーカー、メーカーのホームページにファームウエアが置いてあって、不具合修正や機能アップなどもできるらしいっすよ。 オモチャとして欲しいかも。
【日本正規代理店品】 Jabra SOLEMATE Bluetooth Speaker Black SOLEMATE BLACK
- 出版社/メーカー: Jabra
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: エレクトロニクス
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Jabraというメーカーは、ヘッドフォンを探している時に知っていたメーカーだし、デザインも良かったし、印象には残っていた。そのメーカーのスピーカーだったので、目に止まったし、「そういえばBluetoothのスピーカーがそろそろもう1台欲しいよなあ」と気づいたりした。
そう、この「気づかせる」ということが大事なポイントなんだよな。
◇
今のネットショップや、大型量販店だと「気づかせる」って非常に難しいと思うんですよ。
何かが壊れた(または古くなった)⇒新しいものが欲しいと思う⇒ネットで探す(または大型量販店に行く)⇒買う⇒終了
こんな感じだと思うんだ。欲しい商品をピンポイントで探して、用が済んだらさっさと撤収する感じ。
なんでこうなるかっていうと、店からお客に対してのアピールがない。物を売るだけしかやってない。人件費を削った結果だと思う。削りに削って、大型量販店の店頭には社員がいない。メーカーからやってきたヘルパーさんしか、いない。商品を系統だてて説明することができない。
「だったら、ダンボールを山積みにして売っている店とか、ネットショップでいいじゃないか」ってことになる。すでになってる。
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コストコがちょっと面白いと感じたのは、品揃えが少ない。でも、その少ないなかで置いてある商品が、面白かった。バイヤーのセンスとか、関係あると思う。
スピーカーについては、Jabraのポータブル(Bluetooth)スピーカー数種類とBOSEのCompanion 2というスピーカーだけが置いてあったし、他にはユニークっていう会社の薄型キーボードや、スマートフォンを子機にできるユニデンの電話機とか。大型量販店でも探せばあるのかもしれないけど、(SONYとかパナソニックとかシャープとかそういう会社のは置かずに)これしか置いてないっていうマニアックな品揃えが自分の中ではヒットだった。 しかも、コストコ価格をネットショップと比較してみても、ネット最安値よりも(どれも)安い。
というよりも、コストコが戦略的に「ネット最安値よりも安い値付けをしている」んだろうね。作戦としてうまいと思った。店頭で、スマートフォンで検索されることって、想定済みだもんね。お客さんはみんなやっていましたよ。
ユニーク 2.4GHz ワイヤレスキーボード rapoo E9070 ブラック 5.6mmウルトラスリム E9070
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ユニデン DECT方式コードレス留守番電話機 本体+子機1台タイプ(ブラック) DECT3288(B)
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欲しいかどうか、自分が買うかどうかは別に、(普段は目にしないような)こういう商品を店頭で触れてみることができるのは面白かった。
「気づいてもらう」って、やっぱり、今の大型量販店には決定的に欠けてますよね。あきらめているのかもしれないけど。
お客に「気づいてもらう、気づかせたい」と考える時、そこになんらかの意志表示が必要だと思う。コストコは、それを品揃えという方法でやったんだと思う。「私達は、この商品をセレクトしました、いかがですか?」という店側の意志を感じた。
もちろん、大型量販店が、マニアックな商品ばかりを並べる店になっていいかというと、それはちょっと難しいかもしれない。だったら、なにか別な方法で、店側がお客に対して意志を伝えないといけないんじゃないかな。例えば、店頭販売におけるアピールだとか、製品群をまとめて販売するという仕組みとか、保証の話とか、アイデアはいろいろあると思いますが。
「気づかせる」ことをあきらめた大型量販店には、何が残るのだろうか。
価格競争力
コストコの安さについては、いろいろヒントというか、面白み(マジック)が隠されていると思う。
なぜ1万円を5000円にできるかを、なんとなく想像してみると・・・
- 年会費4200円/人を取る
- ネットショッピングはしないという選択
(店頭まで足を運ばせる⇒他の商品も買ってもらう)
こんな感じですかね。他にもいろいろあるかもしれないけど、価格については、いろんなマジックが隠されているように思った。
人件費を極限まで抑えつつ、ポイントはしっかり抑えている運営をしているんだなあ、とは思った。会員証の発行手続きなどについても、コストをかけずにすむところは、安い機器の組み合わせで実現しておきつつ、でも、会員証の使い回しを最低限防げるようにしているところ、とか。エレコムの安いWebカメラで撮った写真を会員証の写真に使ったりしているんだけど、ああすることで、写真を撮るための人件費や機器の維持管理費を大幅に下げたりしているんですよね。
まとめ
小売業ってかなり厳しいと思います。ヤマダ電機もビックカメラもヨドバシも、安泰な会社なんてどこにもない。イオンなどの大型スーパーでも同じですよね。
お客さんの財布は一つなわけだから、どうやって振り向いてもらうか、そこを徹底的に考えて、商売のやり方を時代にあったスタイルに変えていける会社が生き残っていくのだなあ、と思った。
amazonだけが敵だと思ったら大間違い。amazonだって、どう変えていくかを常に考えているし、コストコだって、同じでしょう。いつまでも同じ商売でやり過ごそうとか、そういうゆるい緊張感でしか商売ができない会社はきっと淘汰されていく。
以上。