■子供の世界、子役の世界
芸能界というのは、大人の世界。
大人の世界の中でも、さらに特殊な世界。豪華絢爛、弱肉強食、下克上。
子役の代表格である「ふくくん」「まなちゃん」をCMで見かけるたびに、彼らには申し訳ないが、ある種の気持ち悪さを感じる。(彼らに否はない)
大人たちは「可愛らしさ・子供らしさ」を、そのTVというフレームの中から伝えようとしているのだろうが、私には「子供らしさ」は伝わってこない。むしろ「子供らしからぬ仕事っぷり」を憂う。
子供は本来、言うことなんか聞かない。気の利いたことなんか、するわけない。遊んだおもちゃを片付けない、すぐに機嫌が悪くなる、駄々をこねる、カメラを向けても(そのタイミングで)笑顔を作ってくれることは稀だ。
でも、そんな自然体が、成長の過程では「あたりまえ」なのだと思う。むしろ、子供がそういう環境で日々を暮らすことが必要なのだと私は思っている。
そんな子供らしさは、子役の彼らからは微塵も感じられない。不自然なほど。
CMに出てくる子役の彼らは、自然体で日々を暮らせているのだろうか。幼稚園、小学校で想像力をつける経験はできているのだろうか?
勝手な想像だが、彼らは子供らしい生活はしていないのだろうし、子供らしい人づきあいをする時間もないだろう。
彼らの周りには、ジャイアン・スネオ・しずかちゃん的な友達はいるのだろうか?個性溢れる友達との人づきあいが、子供時代の密度の濃い経験に必要なアイテムであることは間違いない。大人の世界に投げ込まれた彼らの周りには、イエスマンしかいないのではないか?
私が想像するのは、人の出入りの激しい狭い楽屋で、大人しく座って出番を待っている彼らの姿だ。仕事であれば、我慢しなければならない時がある。それはもちろん、大人になる過程で身につけるべき術だ。でも、その歳で我慢ができるというのは、どうなんだろうか。結局は大人のエゴが無理強いしているのではないか。
■失った時間
大人の世界、大人の仕事場。子供の感受性に刺激は与えるだろうが、その結果、何が起きるのか。
芸能界というのは特別な世界。
芸能界以外で生きていくことになった時、彼らが後で後悔することにならないか、そこだけが(人ごとながら)心配だ。親でもないのに、余計なお世話なんだろうが。
「子役で活躍した人はロクな大人にならない」などとひとまとめに言うつもりはない。ただ、1つ言えるのは、彼らは大人になった時に、失った時間(子供の時の経験)を取り戻すために、途方もなく大きな苦労をするだろう、ということだけだ。
以上。