昨日のブログで、スマートフォンの登場が、以下の2つのインパクトを与えたことを書いた。
- PCがネットにつなげるための、選択肢の1つに成り下がった
- アプリが低価格で手に入りやすくなったため、既存のPCソフトは、今までと同じ商売はやっていけなくなった
補足すると、2.については、アプリ(ソフトウエア)そのものの価値が下がったのではない。サービス提供者側がお金の取り方(ビジネスモデル)を変えたのだ。だから、アプリ作者が儲からなくなったわけではなく、むしろ、個人プログラマみたいな方にチャンスが広がった、と見るべきだろう。ユーザも、その恩恵を受けている。
■なぜ、スマートフォンが台頭してきたのか
「iPhoneというたった1つの製品が売れたから、スマートフォンブームが起きて、結果として相対的にPCが下がったのか?」というと、そうではない。
もともとの出発点は、クラウドコンピューティングが進んだからだ。これがなければ、マルチタッチの電話機が出てきても、それは革命を起こせない。
クラウドコンピューティングが進む先を見た時に、こういう商品が必要だ、ということに目をつけたジョブズが、ジャストタイミングでiPhoneを投入した。
1980年代~2000年代に入ってしばらくまでは、家の中のコンピュータの中心はPCだった。高速な計算機と大容量のメモリ・HDD。部品が高速、高性能であればあるほど、快適に使えるという状況だった。
それがクラウドコンピューティングに移行すると、どうなるか。
計算機はクラウド側での処理になる。データも、手元のHDDからクラウドサービスへ。ネットワークの機能さえあれば、おおよその機能をネットワーク上のやりとりで実現できるようになる。そうなると、手元に高速な計算機も、大容量のメモリもHDDも必要がなくなる。もっと「小さくて」「軽くて」「バッテリーが持続できて」、そんな製品が必要になる。そういう時代がくると考えた時に、何が必要かをジョブズが考えた結果がiPhoneという製品だった。
その後はみなさんのご存知のとおり。iPhoneは、モバイルコンピューティングを加速させた。
クラウドコンピューティングに移行し、PCからスマートフォン・タブレットへシフトが始まると、当然、MicrosoftのWindowsはコンシューマ市場では商売ができなくなる。
そこで、Microsoftは、PCもスマートフォンもタブレットも、すべてを同じプラットフォームで扱えるようにする戦略を考えた。それが秋に発売のWindows8だ。
逆に言うと、Windows8は、Windows95あたりからの流れを断ち切るくらいの変化になる。ざっくり言えば、PCっぽくなくなる。これからもその流れは加速するだろう。
例えば、Windows8は(基本的な使い方は)ユーザIDはローカルで作るのではなく、クラウドのアカウントになる(hotmailのアカウントなど)。そのアカウントが1つあれば、PCでもスマートフォンでもタブレットでも、どの端末でも同じ(デスクトップ)環境が共有できる、ということになるのだろう。
PCが、スマートフォン・タブレットにどんどん近づいていく。WindowsもMacも同じだ。そして、スマートフォン・タブレットも、機能が年々向上し、PCができる機能を包含していく。
いつかPCがなくなるということではないが、おそらく、PCは、モバイル・コンピューティングに適した形に舵を切ることになるだろう。そして、スマートフォン・タブレットもまた、PCが持っていた機能も包含しながら、新たなコンピュータの形へ進化を続けるだろう。この2012年は、そんな変化の一端を見ることができる年なのかもしれない。
以上。